大正11年に名古屋の名駅に開業した『養老軒』。その歴史は平成26年に一旦幕を下ろす事となったが、約100年の歴史をもつ職人の手による『ういろ』の味はそのままに、岐阜県各務原市に場所を移し再出発を果たした。存続を望むファンの声で復活した老舗の変わらない味に、多くの人から心からの賛辞が送られている。
生稲晃子(以下、生稲)
こちらではご創業当時から続く「ういろ」の味を、製法もそのままに守り続けているそうですね。
西脇陽介(以下、西脇 )
はい。創業した大正時代の当時は、名駅界隈は田畑ばかりだったと聞いております。その時代から続くういろですから、バトンを受け継いだ者として伝統の味を守り抜く使命のようなものを感じています。そのため当時の製法による変わらない味を提供し、長年ご贔屓にしてくださるお客様にもご満足いただけるよう努めています。
生稲
本当に長い歴史ですから、生まれて初めて食べたういろが『養老軒』のものだったという方も多いでしょうね。
西脇
そうですね。元々おばあ様がお好きで、4世代に渡ってファンだとおっしゃるお客様もいらっしゃいます。長年お客様に好んでいただいている味ですので、自信をもってお勧めできる商品だと自負しています。抹茶、柚子、小豆、ごまが入ったういろもありますが、お米とお砂糖のみのシンプルな『白』、対して『黒』は奄美の黒糖を使ったういろになります。何と言ってもこの『黒』が一番の人気商品です。
生稲
まさに今ご用意いただいているのが『黒』ですね。実際口にすると、とてもやさしい甘さが広がります。ういろに詳しいわけではありませんが、この素朴なおいしさが昔ながらの味なのだと感じました。
西脇
生稲さんのように、多くのお客様が「昔ながらの味」で「懐かしい」とおっしゃいます。最近は昔ながらのういろ自体が減っていて、同じ商品のようでも食べやすいように小さなサイズにしたり、味もアレンジされたものが主流になりつつあります。ですから当店の変わらないういろに、皆様「どこか懐かしい」という印象を持たれるのではないでしょうか。
生稲
創業当時から製法も材料も変わらず、添加物も加えない純粋なこのういろの味だからこそ、ういろの神髄なのだと感じました。長年愛される理由は、食べてみれば納得のはずです。
西脇
ありがとうございます。当店では『抹茶ろいやる大福』や『黒みつろいやる大福』、四季によって限定あんの入るどら焼きなど、ういろ以外の品々も職人が一つひとつ心を込めて作っています。
生稲
先ほど、羽二重餅で抹茶と小豆、生クリームを包み込んだ『抹茶ろいやる大福』もいただきましたが、濃い抹茶と程よい甘さのクリームと舌ざわりの良いお餅が三位一体となって、たまらないおいしさでした。どれをいただいても、職人さんが丁寧に仕事をされているのがとてもよくわかります。
西脇
この地で再出発が出来たのもお客様の励ましのお声があったからこそです。その期待を裏切らない味をお届けするためにも、これからもとにかく日々精進あるのみです!