病気になり体も心も弱っている時、暗闇の中に光る月のような存在が“かかりつけ医”ではないだろうか。『藤林クリニック』の中山院長は、西洋医学と東洋医学の両面から、患者一人一人に合った治療法を一緒に考えてくれるドクターだ。
生稲晃子(以下、生稲)
こちらは内科と漢方内科を併設されているのですね。
中山麻里(以下、中山)
当院は1982年に私の父が開業しました。父は中国医学に興味をもち、本場中国で鍼灸や漢方について学んだ経験があります。私も漢方薬に興味を惹かれ、中国に留学して勉強しました。そして父の後を継いで院長になったのですよ。
生稲
院長は東洋医学と西洋医学の両方を学ばれたわけですね。最近、漢方薬を使って病気を治したいという人が増えてきたように思います。
中山
色々な治療を試したけれど身体の不調や不具合が治らなかったという方が、漢方薬に希望を見出して来られるようです。また、漢方を用いた治療に保険が適用されるようになった事も、患者さんが増えてきた理由の一つだと思います。
生稲
こちらのクリニックに来られる方で、今一番多い症状は何ですか?
中山
月経不順で来られる女性が多いですね。20代から30代の若い方もいれば、40代から更年期を迎える方もいらっしゃいます。女性の一生は、とにかくホルモンに支配されるものですからね。ピルやホルモン剤などは劇的に効きますが副作用も強い。もっと緩やかな効果で、徐々に体調を整えていくのが漢方治療です。
生稲
漢方薬は副作用がないから安心だと聞きました。
中山
必ずしもそうとは言い切れません。例えば、桃のアレルギーがある方が、桃の種が含まれる漢方薬でアレルギーを起こす場合もあります。また、毎日同じ漢方薬を10年以上飲み続けたところ、腸間膜静脈硬化症という腸機能障害を起こし、手術になった例もあります。漢方は種類や飲む量、やめるタイミングなど、総合的に見極める事が大切なのです。
生稲
自己流で勝手に飲まず、専門家にきちんと相談をしないといけないですね。
中山
そうですね。それと当院で大切にしているのは、患者さんお一人お一人の“元気になりたい”という気持ちです。病気の治療には何より、“病気を治そう”という意欲が必要です。その気持ちをサポートするために、漢方の知識を生かして『食事指導』をしたり、身体の歪みを矯正できる『医療体操』を指導したりしています。特に『医療体操』は、体の柔軟性を取り戻す事で筋肉・関節・神経系に影響を及ぼし、自然治癒力を高めてくれます。
生稲
食事や生活習慣って大事ですよね。わかってはいるのですがどう改善していいのか……。
中山
ライフスタイルは変えにくいものですが、積極的に改善する事で病に対して薬に依存しない生活ができるように指導する、これを『養生指導』と呼んでいます。病気を持っていても生涯現役を目指して意欲的に生きて頂きたいと思っています。